カナダ・BC州の保育業界で、いま大きな議論が起きています。
きっかけは、BC州保育士協会(ECEBC)が州政府に提出した公開要望書。その内容は「保育士の学歴要件を日本でいう4年制大学卒業レベルに引き上げるべき」というもので、現在は短大・専門学校レベルの学歴で資格取得できるので、この提案は大きな波紋を呼んでいます。
カナダの保育士として働くことに興味がある方、すでにカナダで働いている方にとって、この議論は決して他人事ではありません。今回はこの論争をわかりやすく整理してみます。
ECEBC(Early Childhood Educators of BC)は、BC州の保育士を代表する協会です。1969年から活動しており、保育士の専門性向上や政策提言を行っています。
今回ECEBCが州政府に求めたのは、主に4つです。
このうち特に注目を集めているのが、3番目の「学歴要件の引き上げ」です。
ECEBCの主張「保育の質が低下している・・・」
保育は「子どもの人権を守り、発達を支える複雑な専門職」であるにもかかわらず、現状では資格のハードルが低すぎる。そのため、資格を持たない・あるいは資格の低いスタッフで現場を埋め合わせる状況が続いており、保育の質が低下している——。
「学歴要件を4年制大学卒業レベルに上げることで専門職として認められ、給与が上がり、人が集まる」という長期的な戦略です。看護師の資格が時代とともに引き上げられ、社会的地位と待遇が向上した歴史を念頭に置いた主張といえます。
しかし、この主張に対して現場の保育士からは強い反発の声が上がっています。
「順番が逆だ」というのが最大の不満です。
実はIRCC(カナダ移民・難民・市民権省)は2024年に保育士を「低賃金職種」に分類しています。低賃金扱いのまま学士を義務化するのは矛盾だ、という怒りは当然です。
現場から聞こえてくる声をいくつか紹介します。
この議論、日本の保育士をめぐる状況と似ていると感じませんか?
日本でも「処遇改善加算」が設けられているにもかかわらず現場に十分届いていない、資格要件はあるのに給与が低く人手不足が深刻、という問題が続いています。
カナダのBC州でも、$10aDayという「1日10ドルの保育料」を目指す政策が動いていますが、補助金が実際の運営コストに追いつかず、保育園の経営を苦しめているという声も出ています。「制度の理念は良いが、現場の実態と乖離している」という構図は、日本とカナダで共通しています。
現時点では、学士義務化はあくまで「ECEBCの要望」であり、州政府が実際に法改正するかどうかはまだわかりません。
ただ、この議論の方向性は知っておく価値があります。
カナダで保育士として長く働くことを考えているなら、資格取得のタイミングや戦略を早めに考えておくことが大切です。
特に、日本の保育士資格をBC州のECE資格に書き換えることを検討している方は要注意です。
現時点では書き換えの制度は存在しますが、今後学歴要件が引き上げられた場合、書き換えの条件が厳しくなる可能性があります。「いつかやろう」と思っているなら、早めに動くことをおすすめします。
今回のECEBC声明をめぐる議論は、「保育の質向上」という目標は共有しながらも、「どの順番で何を解決するか」で現場と協会が対立している構図です。
学歴要件の引き上げが正しいかどうかは、簡単には答えが出ません。ただ少なくとも言えることは、給与・待遇の改善なき学歴要件の引き上げは、現場の支持を得られないということです。
カナダの保育業界はいま、大きな転換点を迎えています。この議論の行方を、ホイクペディアでも引き続き発信していきます。
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