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BC州デイケアで入園率が低下中?現場が語るリアルと背景

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Facebookのひと言から広がった共感

“Our enrollment has dropped to above 90%. My boss is stressed. Families say it’s financial…”
(「入園率が90%を下回りました。ボスも焦っています。退園理由はほとんどが金銭的なものなのに…」)

この投稿が、BC州の保育士コミュニティで大きな反響を呼びました。
South Surrey、Vancouver、Abbotsford、New West… 各地の保育士たちが次々とコメントを寄せ、
「うちも同じ」「初めてこんなに空いている」「もう限界」と共感の声が広がりました。


South Surrey発:開園1年で半分しか埋まらない

「オープンハウスをしても誰も来ない。」
「ここ15年で最低の入園率。」

South Surreyでは、複数の園が同じように苦戦しています。
開園したばかりの園でも「まだ半分も埋まっていない」という声。
これまで“常にウェイティングリストあり”が当たり前だった地域で、
突然の“空席だらけ”という現実に、管理者たちは戸惑いを隠せません。


Vancouverでも:引っ越し・生活費・退園が相次ぐ

「生活費が高すぎて、みんな郊外に移っている。」
「食料品も家賃も上がりすぎて、もう無理だと退園した家庭がいた。」

Vancouverエリアでは、物価高による家計圧迫が原因で退園する家庭が増えています。
さらに「$10 a Day」の対象園が近くにできたことで、他園へ移るケースも。
ある保育士は、「近くに$10園ができてから入園希望が一気に減った」と話します。


New West・Abbotsfordではプリスクールが閉鎖も

New Westminsterでは、「プリスクールが入園者不足で閉鎖」という報告もありました。
Abbotsfordでも「プリスクール年齢の子が集まらない」という声が複数聞かれます。
一方で、Port Alberni(Vancouver Island)では真逆の状況。
「うちはずっと満席。ウェイティングリストもある。」というコメントもあり、
州内でも地域差がはっきり見えています。


現場のリアル:誰のせいでもない「複合的な要因」

投稿を読み込むと、入園率低下の理由は1つではないことがわかります。

1. 出生率の低下

「Birth rate has been dropping for years. Major drops since 2020.」
BC州の出生数は2022年に過去15年で最低水準。
そもそも“子どもが減っている”という根本的な問題があります。

2. 生活費の高騰

Vancouverでは家賃も食費も上がり続け、
「daycare に払うより自分で見る方がまし」と判断する家庭も。

3. 新設園の急増と競争

「Too many centres have opened.」
政府が補助金で新しいチャイルドケアを増やした結果、
一部エリアでは園同士が顧客を奪い合う構造に。

4. $10 a Dayプログラムの影響

「Parents only want $10 a day daycares.」
制度自体は良いものの、対象園が限られすぎており、
「安い園だけが人気→他の園は空席」という二極化が起きています。


現場の声が突きつける本音

“It’s stressful. I can’t fix families’ financial issues, but my boss pressures me.”
「家計の問題は私の力ではどうにもできない。でも、上司は数字を見て焦っている。」

“Every morning, the playground feels emptier.”
「朝、静まり返った園庭を見るのが辛い。」

入園率の低下は、単なる経営課題ではなく、
現場スタッフの心にも負担を与えています。


データが示す現実:本当に減っているのか?

統計的にも、この現象は裏付けられています。

  • 2023年時点のBC州の保育利用率はパンデミック前より約4%減少
  • 2023年末、BC州では保育利用中の0〜5歳児が約1万人減少
  • 出生率:2022年 1.00(過去最低)→ 子どもそのものが減少中

(出典:Statistics Canada, BC Gov, Cardus Report 2024)

つまり、South SurreyやVancouverのような地域で見られる「空き」は、
個別の園の努力不足ではなく、社会全体の変化の一部といえます。


働く保育士として、今考えたいこと

入園率の低下は、園の経営だけでなく、保育士一人ひとりの働き方にも影響します。
シフトが減ったり、契約内容が変わったりすることもあり、
「どの園で働くか」がこれまで以上に大切になっています。

BC州では、いまだ約9%の施設しか「$10 a day」制度に参加していません。一方、Prince Edward Island(PEI)州では、2024年1月1日から、州が認定しているEarly Years Centre(EYC)や家庭的保育(Family Home Centre)の保育料が、どの家庭でも1日あたり10ドルに統一されました。

参考:https://www.princeedwardisland.ca/en/news/10-a-day-child-care-starting-january-1?utm_source=chatgpt.com

つまり、PEI州の場合はこれらの指定を受けている施設であれば、0〜5歳の子どもを預ける家庭は、どの年齢でも一律10ドルで保育を受けられるという仕組みです。
このように同じカナダでも、こうした制度の浸透度には大きな差があります。

この違いは、保護者の負担だけでなく、保育士として働く環境の安定性にも直結します。制度が整っている地域では、園の運営が安定し、職員の配置や給与面にも余裕が生まれやすい一方、制度が遅れている地域では、入園率や経営面での不安定さを現場が直接感じることもあります。

保育士の需要、制度や支援の進み具合を知ることは、自分のキャリアと生活を守る第一歩です。
カナダで働く保育士として、より安心して働ける場所を選びましょう。

ホイクペディアとしてもこれからカナダで保育士を目指す方が安心して働けるように情報収集を続けていきたいと思います。

参考資料

  • Statistics Canada, Canadian Survey on Early Learning and Child Care Arrangements (2023–2025)
  • BC Government, ChildCareBC Program Updates 2024
  • Cardus, Daycare Vacancy Rates in British Columbia (2024)
  • CCPA, Child Care Deserts in Canada (2023)

この記事を書いた人
福岡大学人文学部卒業後、カナダに留学。 MTIコミュニティーカレッジでEarly Childhood Educationを勉強。 2007年バンクーバーのデイケアに就職。
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